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二つの能 (能力と機能)

以前のコラムにも書いたが、私は昔、ハイファイに憧れる少年だった。もっとも私のみならず、その頃の高校生くらいの少年は、一様にコンポ型ステレオを親にねだったものである。

私自身は、中学生の時に新聞配達して貯めたお金で、既にコンポを買って持っていたのだが、親に買ってもらっただけの友人のコンポの方が、「ボタンが一杯ついてる」のでうらやましく思った記憶がある。友人に「ボタンの数」を自慢されると、何の反論もできないのだ。実に悔しかったが、それにしてもあのボタン類はいったいなんだったのだろう。

今のステレオコンポを見ると、あんなボタンは存在しない。実際は当時でも、入力の切替とボリュームがあればほぼ充分で、友人ご自慢のボタン類は、ほとんど使われなかっただけでなく、結局接点が錆びついて、操作するとガリガリと異音を出すだけの物になってしまった。つまり必要なかった物なのである。では何のために設計者達は、あのボタン類を装備させたのだろうか。

それはメーカー側にしてみれば、オーディオは「音という感性に訴える製品であることは判っていても、音の良さを購買者に訴えるすべが無かったからだ」と私は考える。そしてまた買う方も、カタログを見ても音の良さは判らないから、「同じ値段なら、ボタンが多く付いていた方が良いに違いない」程度の判断だったのだ。

あのオーディオに付いていたボタンは、みな、機能(function)である。そしてオーディオ自体に我々が求めていたのは、レコードやカセットなどに刻まれた音を再現するという、能力(ability)である。同じ「能」の字がついてはいるが、意味合いはかなり違う。

能力とは個々の機能の積み重ねでは無い。「個々の機能を使うこことによって何かができる」ことが能力であり、どんな能力が必要か、言い換えれば「何がしたいのか」は、その人やその立場によって違うのである。そのためメーカーは「どのような人にも対応できる様に、豊富な機能を付けている」のだが、それが逆に「使わない機能ばかり」の凡庸な製品が生まれる要因となっているのだ。

設計者にしてみれば、一生懸命盛り込んだ機能が使われないのはとても悲しいことだし、ユーザにしても、使わない機能に金を払っているのではたまらない。そしてこの隔たりの要因はメーカとユーザ双方にあるのだが、ここではメーカ側の要因について述べよう。

ひとことで言えば、メーカーは「自分達が作っている製品の使い方を知らない」のである。メーカーは製品開発にあたり、当然ニーズ調査を行なう。そしてそのニーズを満たす為の「機能」を盛り込んだ製品を作って売り出す。しかしユーザがどうやってそれを使うべきか、ということまでは考えていないのである。

ところが「ニーズを満たす」だけでは、昨今の物余りの世の中では「売れない」。ましてや「他社と同じ様な製品を出しておいて自社の製品だけが売れる」ということは有り得ない。売るためにはニーズを満たすより重要なことがあり、それは買ってもらった人にその製品の能力を活かしてもらい、満足してもらうためのポリシー(戦略・知略)なのである。

私はウオークマンを生み出したことも偉かったと思うが、それよりもウオークマン文化を作り出したソニーがもっと偉大だったと思う。ウオークマンが生まれる以前、当然、ウオークマンは存在しなかった。市場があるか無いかは誰にもわからなかった筈であり、事実、故盛田昭夫氏は、ウオークマン開発にあたって社内でもずいぶんと反対を受けている。

しかし、その使い方をちゃんと知っていたところが、彼らの素晴らしかったところだ。販宣員にウオークマンを実際に使いながら歩かせ、「へへっ、こいつはこうやって使うんだぜ」と、将来のユーザに自慢げに見せびらかして歩いたはご存知だろう。その結果、新しい市場が生まれ、世界的な文化となったのだ。

私を含めて製品を提供している側は「自分達の売る物を本当に判っているか」ということを、今一度考えなくてはいけないのだ。あなたはあなたが売っている物を、「へへっ、こいつはこうやって使うんだぜ」と自慢して売ることができるだろうか。いやその前に、自慢できる要素が製品にあるだろうか。

もし自慢できる要素があるなら幸いだ。今度はそれを広める方策を考えよう。誰に使ってもらいたいのか、どういう風に使って欲しいのか、使った人が喜んでくれる方法を考えよう。あなた以上にその製品のことを知っている人はいないはずなのだから。

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